クロスのピアレス125を「最高に使いやすいボールペン」にする方法

さて僕が現時点で最も使いやすいと評価しているボールペンは、クロスのピアレス125である。しかし残念ながら、クロスから購入したまま利用しても、”最高” とはならない。

万年筆の場合だと、ペン先を利用者のクセに応じて加工することが必要になっている。そういった仕事を請け負う “ペン・ドクター” という職人さんの存在を知る人も多いだろう。ピアレス125もレーシングカーのように、チューンアップ作業が必要なのだ。

「えっ、でもボールペンは替え芯を使うから、ペン先は関係ないでしょ?」と思われる方もいるだろう。
たしかに普通はそのように考えるハズだ。

しかし… ボールペンというのは替え芯という弾も揃って、初めて筆記具として完成する。数分程度の利用ならばともかく、相棒として数時間は利用するのであれば替え芯やインクも大切な要素となる。

マンガで有名なゴルゴ13にしても、彼をバックアップする職人の存在は重要だ。そのためにスピンオフシリーズとして単行本マンガも発行されている。

ここまで説明すれば、クロスのピアレス125を「最高に使いやすいボールペン」にする方法、何となく分かって来ただろうか。

これはクロスのエッジというボールペン向けにカスタマイズした三菱鉛筆シグノ替え芯だけれども、要領は変わらない。プラスチック部分を可能な限り削って、その代わりに鉛シートを巻き付けるのだ。

なおペン先の金属部分には、5mm角くらいのセロテープを貼ってある。海外製のボールペンというのは口金とペン先の間に隙間があるタイプが多く、クロスも例に漏れない。そこで書くときにペン先ぐらつかないように、隙間をギリギリまで狭くするのだ。
(透明な色のマニキュアを塗るという方法もある。また口金がゴールドのボールペンの場合は、黄色系のマニキュアを使うと “いい感じ” に仕上がる)

ただしクロスのピアレス125の場合、これだけでは不十分だ。いかに本体部分が12cm程度の短軸といっても、バランスが後端側になって “イマイチ” な書き心地で終わってしまう。それにキャップも含めると50gを超えるが、本体部分だけでは31gに過ぎない。

クロスのエッジというボールペン

ちょうどクロスのエッジという入門モデルが31gであり、それと大して変わらない使い心地で終わってしまう。そこでゴルゴ13も信頼している職人デイブ・スミスの出番となる訳だ。

やることは至極単純で、ZABRAのSARASAとか、三菱鉛筆のシグノといったジェルインク型ボールペンの替芯から、徹底的にプラスチック部分を削り落とす。そして削り落とした部分に出来るだけ多くの鉛シートを貼る。

幸運なことに、ピアレス125の内部空洞は広い。0.3mmの鉛シートを2枚重ねると微妙に太過ぎるけれども、丁寧に少しずつ削っていけば良い。

まさに職人デイブ・スミスの技である。作業は小一時間くらいを必要とするので、「オレ、一体何をやっているんだろう?」と自問したくなる瞬間もやって来る。それを勢いに任せて突っ走って作業完了させることが、この仕事を完了させるポイントだろうか。

なお鉛を加工するのは、一般人にはオススメできない。先ほどのマンガ本で職人デイブ・スミスが語っているように、若い職人たちは使わない素材だ。加工には注意を必要とするのだ。

クロス替芯の互換芯

このような手間と時間をかけたカスタマイズによって、ようやくクロスのピアレス125は “依頼されたミッションを遂行できる相棒” となる。クロス・ジャパンが謳う “クロスで最も高級なコレクション” の性能をフルに発揮できるようになる。

もちろん何も工夫しない “ノーマルなピアレス125” であっても、決して悪くはないボールペンだ。2014年に商品化されただけあって、スマホやパソコンばかり使用する現代人向けに仕上がっている。ピアレス125に興味のある方は、コチラの記事をオススメしたい。

それから僕が特殊なのか、そもそも日本人が特殊なのかはハッキリしていない。漢字やひらがなはアルファベットとは文字形態が異なる。そうでなくても僕が知る欧米人は、文字のキレイさには無頓着だ。映画でトム・ハンクスがファーバーカステルの伯爵コレクションというシャープペンシルを使う時の指配置に、大いに驚かされたことがある。

ちなみにピアレス125の誕生に関しては、クロス・ジャパンでも語られている。

(鉛シートはDIYショップだけではなくて、ゴルフ用品店などでも入手できそうな気がする)

ちなみに先ほどの画像では替芯の後ろ側は無加工だったけれども、これは「重心をペン先の方に持って来たかった」という理由である。長時間使用だと疲れやすくなってしまうけれども、微妙なペン先コントロールは容易になる。一長一短なのである。

なおピアレス125ボールペンと替芯&インクとの相性が致命的に重要なのだけれども、僕にとってはZEBRAのサラサ・ドライ0.4mm (JLV 0.4)がベストだったりする。いや、逆にサラサ・ドライにふさわしいボールペンを求めていて、クロスのピアレス125に行きついたと言っても過言ではない。

某ネットショップのクロス製ボールペン評価レビューでも、ZEBRAのノーマル型SARASA (JL 0.5)に似合ったボールペンを探していて、エッジに辿り着いたとコメントしている人がいた。インクからボールペンを選ぶのは珍しいと思われるかもしれないけれども、ボールペンとインクの相性は欠かせない。

だから我が親父が「クロスの替芯は高価だから、自分で購入して使うつもりはない!」と言うけれども、少しでも安くクロス純正芯を購入したいと考える人は多い。たしかに個人的には最近数年のクロスはインクも進化させており、ボールペンの使いやすさがアップしているように感じている。

もちろんここまで繊細な使い方になってくると、どんな状況下でもピアレス125が最高だということはない。ゴルゴ13が状況に応じてツールや消耗品を変えるように、我々も状況に応じて筆記具の本体やインクを変えることが必要となる。

だから万年筆派だと「インク沼」という言い方があるように、紙やインクでアレコレと散財することになる。たかがボールペン… されどボールペン… 筆記具道は、どこでも奥が深いのである。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静