マスク認証の設定方法 (「半分覆う」では不十分)
iPhoneをマウス装着して顔認証(Face ID)する方法としては、マスクを半分に折って認証登録する手法が有名だ。
しかし実際にやってみると分かるけれども、なかなか上手く設定することが出来ない。と、いうか、素人には殆ど不可能だ。10回は挑戦してみるべしと推奨するサイトもあったので、本当に10回ほど試してみた。
しかし結果としては、マスクの鼻部分を下方向にずらして、ようやく顔認証できるという結果が精一杯だった。マスクをずらして再びフィットさせる苦労をするくらいならば、大人しくパスワード画面のお世話になった方が効率良い。
いろいろとネットの情報を漁ってみても、実際にマスクを装着して顔認証に成功しているサイトやYoutube動画もない。どうやら実際に検証することなく、聞きかじりでマスクを半分に折る方法を紹介しているらしい。
これじゃ困る人も多いだろうと思い、IT技術者のハシクレとして、なんとかマスクを装着したたままiPhoneで顔認証させることに成功した。そこで今回は、せっかくなので “iPhoneにおける顔認証のメカニズムと、登録方法のコツ“ を紹介させて頂くことにする。
ちなみに実績としては、ぼくと他二名がやって問題なくiPhoneで顔認証できている。全員がメガネを装着しているので、おそらく殆どすべての方で有効な設定ノウハウだと思う。
iPhoneの顔認証メカニズム
iPhoneの顔認証メカニズムの原理などと言ったけれども、基本的には一般的な顔認証メカニズムと大差ない。大仰な言い方をしてごめんなさい。
- 顔全体の輪郭を識別
- 特徴要素を規定し、距離・色・相関関係を抽出
- 一般/保存済み本人データとロック解除時のカメラ画像を照合して本人確認
何やらムズカシそうなことを書いているけれども、別に大したことはない。人間を撮影した二枚の写真を並べて、同一人物だと識別するのと変わらない。
いや大したことないと言ったけれども、実はコンピュータ的にはものすごく「大したこと」だったりする。なぜなら人間の顔は、その時々で微妙に変化している。今までのコンピュータで採用されていた「画像の完全一致」をやっていたら、同一人物であっても本人だと認識するなんて不可能に近い。
つまりiPhoneは人間が二つの目で網膜に画像データを取り込むように、カメラから画像データを取り込んでいる。そして最新AI機能 (Artificial Intelligence:人工知能) を駆使して、登録人物に間違いないと判定している訳だ。
だからこそ、ぼくがマスクをしていても、iPhoneは「ぼく」であると認識してくれるのだ。自分の写真をかざしても、人間とさえ識別しない。IT技術者からすると、iPhone開発者たちには素直に脱帽する。
そしてマスク認証に関係する話だけれども、測定箇所の全てが一定範囲内であれば同一人物と識別する訳じゃない。口の部分が隠れていても、照合結果は「同一人物」となる。だからマスク認証が可能になるのだ。
つまり問題は、「どこのデータをどのように利用しているか」を把握する点にある。興味深いことに、どうもiPhoneは最初の認証データ登録開始時には「顔を覆っているものがあるようです」とメッセージ表示するものの、認証データを収集している時点では、マスクで覆っている部分のデータもキッチリ収集しているらしいのだ。
これは技術者的には、スゴイ挑戦をしていると感心させられる。つまりマスクをマスクと認識しつつも、その内側に存在する皮膚部分の形状まで推定しよういう技術開発に繋がる。この技術が実用化すれば、たとえアイドルのようにサングラスとマスクで変装しても、その変装が役立たなくなってしまう。
(いやアイドルのファンには、サングラスやマスクも通用しないかもしれない。そんな「アイドルファンのような超識別力」を、iPhoneにも実装しようとApple技術者は頑張っている訳だ。)
もちろんマスクがアコーディオンのように折りたたみ式だと、空洞部分が多くなるので素顔部分を識別する難易度が上がる。これが現在のiPhoneの顔認証システムであり、ぼくが最初にぶつかった壁なのだ。
iPhoneマスク認証のコツ
さて肝心なiPhoneでのマスク認証の設定方法に入ろう。まず顔認証メカニズムから推測できることは、「マスクを折り畳んで右半分だけ顔を隠して顔認証させる。そして次に左半分を隠して顔認証させる」といっても、「どこをどのように隠すか」が重要となるということだ。
いい加減に右の頬だけ隠して認証させるとか、左の頬だけ隠して認証させようとしても、いざマスクを装着した時には全くIphoneのFace IDを認証パスできない。ぼくが三名で検証した時には、次の二点が有効だった。
- 右側を隠す時は、右耳に紐をかける
- 鼻の頭は、わずかに隠れるようにする
この鼻の頭部分は、「出した方が良い」という意見と、「しっかり隠した方が良い」と相反する意見が出回っている。鼻の頭は顔で最も突出した部分だから、顔認証における重要ポイントとなっている可能性は高そうだ。
そこでぼくの場合は、わずかに隠れる形で試してみた。三名が全て団子鼻なので、まあこれで十分だろうと考えた訳である。この鼻に関しては、さらに検証データを集めて、認証精度を高めるのが良いだろう。
と、ここまでは幾つかのWebサイトでも指摘されていることだ。さらにぼくがiPhoneでマスク認証を成功させるためには、次の三点にも留意することが必要となった。
- 顔にフィットするマスク
- 必要最小限のサイズ
- 竹櫛を使って手先を見せない
ぼくは殺菌能力の高いヤマト真空工業のマスクを愛用しているので、冒頭説明のように大変苦労した。何しろ10回挑戦しても、鼻部分を下にずらさないとFace IDが認識してくれないな。もちろんアコーディオンのような折りたたみ型マスクだ。
そこで上記の「なだらかタイプのマスク」に交換したら、一気にマスク装着時のiPhone顔認証の成功率は改善した。10回のうち、8回くらいは無事に認証されるようになった。(まだ工夫すれば、認識率を改善させる余地は大いにあると思う)
でも8割の成功率では満足できない。目標は10割だ。「2番じゃダメなんですか」なんて論外だ。そこで次の手として、「小さめのマスク」を試してみることにした。
そう、これは誰もがご存知の「アベノマスク」だ。ヤマト真空工業のような、金属を蒸着させることによる殺菌力は備えていないけれども、花粉症フィルターなどを、布と布の間に挟み込むことも可能だ。
で、このマスクが大変に素晴らしくて、今のところ「ほぼ100パーセントの認識率」を実現できている。うーん、こんなところでアベノマスクが役立ってくれるとは、まさに期待以上の素晴らしさである。
なお今のところは気休めのような気もするけれども、顔認証をする時のiPhone位置にも注意するのが良いかもしれないと思っている。
これはiPhone XS Maxで自撮りした画像だ。随分とカメラの中心位置からずれている。もしもこのデータを顔認証に利用しているのであれば、よくまあ少ないデータで顔認証メカニズムを駆動できるものだと感心する。
つまり既に登録したデータに加えて、顔認証させる時のデータも認証OKとなりやすいデータを提供しようという発想だ。ぼくの場合は、なるべくおでこを中心に顔認証させるように心がけている。
ちなみにどうでも良いことだけれども、ぼくも加齢でおでこの広さは拡大する一途なんだけれども、この部分をFace IDで利用できれば素晴らしいと思う。
だいたいFace IDで厳密にデータ管理をしたいのは、やっぱりお金目的が一番だろう。一方で比較的お金を持たない若者は、髪の毛が多くて生え際はデータ利用しにくいと思う。そして現在のAppleは万人向け設定を採用し、特におでこ部分を識別時の重要ポイントには設定していない。
しかし追加料金を払っても、「おでこ認証」を利用する者が相当出てくるような気がする。こればかりは髪の毛を剃ったりして誤魔化すこともムズカシイからだ。
たしかに全員共通の重要パーツではないし、生え際は時々刻々と戦線後退するものだけれども、天下のAppleならばぜひ「おでこ認証」にも挑戦してみて欲しいところだ。
しめくくり
以上の通りで、iPhoneをマスク装着したまま顔認証させるにはコツが必要となる。
- 左半分・右半分を分けて認証させる
- その際は幾つかのタイプのマスクで試す
- 鼻の頭の出し具合を調整してみる
- アベノマスクは実用性が高い
- 認証画面に手は写さない
- ロック解除時の顔の位置に注意
現在は使い捨てのアコーディオンのように「ひだひだのあるマスク」が世間的には推奨されているようだ。しかしiPhone的には布マスクいったような「滑らかなマスク」の方が顔認証に都合良いらしい。
これらのノウハウを駆使しても結構手間取るかもしれないけれども、2021年4月24日時点で、3名の者がiOS 14.4.2でマスク認証でiPhoneを利用できている。
ぜひくじけることなく、いろいろと工夫して頑張ってほしい。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:小野谷静 (おのたにせい)